無言の少女

友達とBarで飲んでいたところから舞台は急に変わった。
場所なんて判らないけど、多分貧しくて混乱した、いや、もはや混乱すらしてないところなのかも。
日本のどこかかもしれないし、でも間違いなくこの地球上では同じようなことが起こってると思う。


今日の朝、人生20年間以上過ごしてきて、初めて自分の夢で泣いてしまった。
夢の中じゃなくて、夢を見て、つまり目が覚めてから。とてつもなく悲しく、怖く、不安で。



―――
古ぼけたぼろい小さな施設にいた。
多分俺はそこで暮らしてて。母も一緒に。
電気は通っていたのだろうか。
彼女は何人かの従業員を伴って、孤児や障害者、老人の世話をしている。
修道女のように。その自分たちの住処であろう施設で。
でも、子どもが溢れ彼女らだけでは手が到底足りていなかった。
子どもは走り廻り、泣き叫び。


子どもたちに親はおらず、捨てられたのか失ったのかもわからない。
そのような情勢だったのかも知れない。平和じゃないと感じていたと思う。
俺はもちろんストレスが溜まる一方で。
部屋の中はグシャグシャ、子どもの排泄もそのままになっているくらい。
母と別の女性はそれを手で集めて処理し、赤ちゃんを丁寧に拭いてやり、部屋を綺麗にする。
仕事だから仕方がないといった感じを見せず、ただ、当たり前のような行動で。
ある日一人の2歳くらいの女の子が、別の子にミルクを与えている女の人の足元で駄々をこね、
泣き叫びながら自分が持っていたミルクを床にこぼした。
ストレスが最高潮になってしまった俺はその子に酷く怒鳴る。


周りから音が消え、後悔、ただそれだけに支配された感情はその場に立ち続けることさえも許さなかった。
足の力が抜けミルクのこぼれた床に座り込む。
傍のテーブルの反対側に行ってしまったその女の子は、泣くことも止めテーブルの一点を見つめている。
謝ろうとするよりも、許しを欲しその女の子を胸に抱いた。
というより、呼んだのは自分で手も差し伸べたけど、
その子に抱き締められていたような気がする。
何も声にして言わず。
泣きもせず。
怖がらず。
ただ、許してあげる。いや、許しを請う必要もないと言わんばかりに。
―――


今でもあの子の感触は覚えてるわ。
なんか妙にあったかいねん。冷たいような気もどっかでするんやけど。
落ち着いてシャワー浴びてても思い出して、なんか気持ち悪かった。
忘れるには、見知らぬ人と行き摩りのセックスがちょうどいいくらい。
人間臭いこと。しかも途轍もなく。


怖い。ほんまに。何でそんな夢みたんやろう。
しかもいろんな立場から見てた。俯瞰もしてた。
確かにいろんな俺が持つ不安な要素は兼ね備えてるんよ。普段は気にしんような。
もっと心の奥の深いところで考えてるようなこと。
例えば、おかんのこともやし。うちのおかん介護の仕事してんねんな。
自分は好き放題してんのに、おかんむっちゃくちゃ働きまくってるしさ。
しかも自分が好き放題してんの全部おかんのおかげで出来てる訳で。
あと、最近平和に関してもよう考えるし。あっ何回も言うけど胡散臭い平和主義とかは大っ嫌いやねんで。
子どもとか好きやけど嫌いやし。汚いもんとか部分なんかありえへん。
自分自身の、認めとるけど自分で見たくないところの感情とかも。
ほかにもなんかいっぱい在りすぎる。重かったわ〜。


ん〜なんやろ。疲れてる。今日は。(遊びすぎ?笑)
朝あの夢のあとは人間臭いものの中に身を持っていきたかったけど、
今は全然逆かもしれん。焼けるように熱い砂の上とか、刺すように冷たい水の中とか、
そんな、愛とかそういった類のものを一切感じんようなとこに身を置いて、
てか投げ出して、無で寝たいわあ。